このサイトをご覧のみなさんはAGAという言葉をご存知かもしれません。男性型脱毛症のことで、Androgenetic Alopesiaの略語になります。思春期以降の男性にみられる脱毛症の一つで、前頭部や頭頂部といった部位に起こりやすいというパターンがあります。それに対して女性で起こる脱毛症は女性型脱毛症と呼ばれ、頭皮の正中線に沿ったクリスマスツリー状に拡大するパターンを持っています。ただし、女性でも閉経後などホルモンバランスが崩れた際には男性ホルモンの過剰産生により前頭部や頭頂部の脱毛が生じる場合もあります。今回はそのうちの、「AGAのメカニズム」についてお話しさせて頂きます。
毛周期について
AGAのメカニズムを理解するのには、毛周期について知る必要があります。毛周期とはヘアサイクルとも呼ばれ、大きく成長し太い毛幹を形成する「成長期」、毛組織が縮小、退縮していく「退行期(移行期)」、活動を休止する「休止期」という3つのステージを繰り返すというものです。AGAの原因となる男性ホルモンの影響がある場合、「成長期」が短くなってしまいます。すると短期間でヘアサイクルを繰り返すようになり、毛組織自体のミニチュア化を起こし、毛の直径も細くなり、軟毛化、脱毛が進行することになります。
血中にある比較的活性の弱い男性ホルモンであるテストステロンは、毛乳頭でⅡ型5αリダクターゼという酵素と出会い、活性の強い男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(Dihydroteststerone : DHT)に変換されます。このジヒドロテストステロンが毛乳頭のアンドロゲン受容体に作用することで、先ほど述べた「成長期」の短縮、つまりヘアサイクルが短くなるということが起こり、脱毛を引き起こすことになります。5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型がありますが、Ⅱ型がAGAの好発部位である前頭部や頭頂部に多く分布しています。このことによってAGA患者は前額部からのM字型や頭頂部からのO型の脱毛症になるというのも理解できると思います。こうしてⅡ型5αリダクターゼの働きを抑えることがAGAの治療になるということが分かり、現在治療に広く使用されているのがフィナステリド(商品名:プロペシア®)という薬剤になります。臨床例として、Ⅱ型5αリダクターゼの遺伝子変異をもつ男性化性半陰陽の患者はAGAを発症しないという事実があることも興味深い事柄の一つです。
プロペシア®によるAGA治療
フィナステリドは元来、5mgの高用量で前立腺肥大症・前立腺癌の治療に用いられたプロスカー®という商品名の薬でした。しかし1mgの低用量でAGA治療での研究が進み、1997年にはアメリカ食品医薬品局(Food and Drug administration : FDA)で認可され、その後世界中でAGA治療に用いられています。2005年には日本でも厚生労働省の認可がおり、プロペシア®の商品名で医療機関において処方をうけれるようになりました。そして、「AGAはお医者さんに相談だ」というキャッチフレーズでお笑い芸人の爆笑問題がCMに出演し、一般の人々の間でも一気に有名になりました。1日1回1錠の内服で済むプロペシア®によるAGA治療はその当時画期的で、現在ではたくさんの方がAGA治療を行うようになっています。芸能人で明らかに薄毛の進行が止まったり薄毛が治った方をよく見かけますが、あなたの周りにもそういった方がいるのではないでしょうか?しかし、プロペシア®にかかる費用がやや高額なため、AGA治療をあきらめてしまう人も少なくありません。
プロペシア®はMSD社の商標登録ですが、他社も同じ有効成分であるフィナステリド製剤で用量も同じ、効能効果も同じというものをジェネリック医薬品として販売しています。ジェネリック医薬品は開発費を取り返す必要や先発メーカーというブランドイメージがないため、一般に先発品よりも安く処方をうけることができます。そして、効能効果や副作用に関しても変わりがありません。有名メーカーのブランドイメージに惑わされず、効能効果や有効成分を理解することで費用対効果が大きく変わります。毎日飲む薬なので長期的には大きな違いとなります。ジェネリック医薬品をうまく活用することで、デートやおしゃれに回す費用を増やせます。賢い選択をしましょう。
インターネットでの薬の購入(個人輸入)についての注意点
現在、インターネットで薬の売買をうたうサイトが多く存在します。しかし、日本国内では薬の売買が薬事法により大きく規制され、インターネットでの売買は禁止されていることをご存知でしょうか?よくみかける薬の売買をうたうサイトは、実際の法律上では脱法的で、「個人輸入」という形式になっています。これは個人の責任において、薬を輸入するという意味で、薬の副作用がでた場合や違法成分が検出された場合も勿論個人の責任となります。個人輸入の経験者にはそのことを理解せずに行っている方がとても多いです。
また、最近では偽物の薬が多いことも問題となっています。ファイザー社の調査では個人輸入で扱われている薬の6割が偽物だったいう驚愕の結果がでています。当院で扱う薬品は生産が海外でも輸入の際に関東厚生局等でのチェックが行われますし、メーカとの直接の取引が行われるので偽物が混入する心配がありません。ジェネリック医薬品は医療機関で処方してもらうようにしましょう。