AGA(男性型脱毛症)によりヘアサイクルに乱れが生じると、薄毛が進行してしまいます。プロペシアはAGAの原因物質DHT(ジヒドロテストステロン)を抑制し、ヘアサイクル(毛周期)を正常化させ、ヘアサイクルの乱れによる薄毛の進行を抑制します。今回はプロペシアの効果、プロペシアがヘアサイクルに与える影響について記述していきたいと思います。
プロぺシアとは
プロペシア(Propecia)は一般名フィナステリド(finasteride)と呼ばれており、米国メルク社により開発された内服のAGA(男性型脱毛症)治療薬です。国内では2001年にMSD株式会社による臨床試験が行われ、4年後の2005年には製造販売承認を取得するとともに、国内での発売が開始されました。プロペシアの剤型は薄赤色のフィルムコーティング錠で、「プロペシア錠0.2mg」「プロペシア錠1.0mg」の規格が存在します。
プロペシアの効果
日本でプロペシアを販売しているMSD社の添付文書によると、プロペシアの効果・効能は「男性における男性型脱毛症の進行遅延」とされています。プロペシアの服用により、男性ホルモンの一種「テストステロン」と「5α還元酵素」の結合によって生じるジヒドロテストステロン(AGAの原因となる悪玉ホルモン)の産生を抑制し、薄毛の進行を防ぎます。プロペシアに直接的な増毛効果があるわけではないのですが、プロペシアの効果により、抜けてしまうはずだった毛が減少し、抜けずに残った髪の毛が成長することで、結果的に増毛へと繋がるわけです。また、プロペシア(フィナステリド)服用の継続年数が長くなるほど薄毛の改善効果が高くなることがわかっています。日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症治療ガイドライン」によると、フィナステリドの内服1年で現状より高い薄毛改善効果を得た方が約58%、内服2年で同じく改善効果を得た方が約68%、内服3年では78%となっており、フィナステリド内服の継続年数に比例して効果が高くなっていることが伺えます。
ヘアサイクルとは
ヘアサイクルは毛周期とも呼ばれ、2年から6年に渡る成長期、2週間から1ヶ月の退行期、3ヶ月から4ヶ月の休止期の3つのサイクルを繰り返しています。ヘアサイクルの期間の8割程を占める成長期は髪の毛の毛母細胞の分裂が活発になり、髪が成長します。成長期の長さに比例して髪は太く、長く伸びる傾向にあります。成長期が終わると退行期に移行します。退行期になると活発だった毛母細胞の分裂が終わり、毛根が徐々に小さくなっていきます。退行期を経て休止期に入ると、さらに毛根が縮小し、古くなった髪の毛は抜け落ちていきます。休止期が終わると3ヶ月ほどの期間を経て、成長期へと以降します。休止期にあたる髪の毛はおおよそ全体の1割程度と言われています。髪の毛1本1本のヘアサイクルはそれぞれ異なっており、通常は一度に生えたり抜けたりすることはありません。AGAになると成長期の期間が短くなり、退行期・休止期の髪の割合が増加します。
ヘアサイクルが乱れる原因
男性ホルモンの一種、テストステロンが毛根部分に存在する5αリダクターゼと結び付くとテストステロンがDHT(ジヒドロテストステロン)に変化します。DHTが男性ホルモン受容体と結び付くと、TGF-βという脱毛因子が産生されます。TGF-βは退行期誘導因子とも呼ばれ、正常に働いていたヘアサイクルを乱し、髪の毛の成長を妨げます。また、カスパーゼと呼ばれる自殺酵素を活性化させ、毛母細胞死(アポトーシス)を誘発します。
プロペシアは乱れたヘアサイクルを正常化させる
前項で述べたように、AGAの原因物質、DHT(ジヒドロテストステロン)から生まれるTGF-βという脱毛因子は、髪の毛の成長期の期間を短くし、ヘアサイクルを乱してしまいます。ヘアサイクルが乱れると、本来成長するはずの髪の毛が生えてこなかったり、髪の毛が成長する前にヘアサイクルが休止期に入ってしまったりと、髪の成長に対して様々な悪影響を及ぼします。プロペシア(フィナステリド)はDHTの産生を抑えることで、短くなった成長期を元に戻し、髪の毛が成長できる環境を作ります。また、退行期には正常な脱毛を促し、乱れたヘアサイクルを正常化させる働きを持ちます。
偽造薬にご注意ください
インターネットや通販では個人輸入や個人輸入代行業者などを通じて簡単にAGA治療薬の購入が可能です。ところが、ネットや通販で販売されている薬剤の6割以上が偽造薬と言われています。偽造薬の中には有効成分が十分な量含まれていなかったり、中には製造の過程で混入した不純物が混ざっていたりと、お薬の効果がないばかりか、重篤な健康被害を被ることになりかねません。正しいAGA治療を行うためには必ず正規の医療機関やクリニックを受診し、医師の診察のもと処方を受けるようにしましょう。