現代のストレス社会では仕事や人間関係、他にも様々な要因からうつ病を患ってしまう方が多い傾向にあります。平成23年度の厚生労働省による「精神疾患による患者数」のデータによると、気分障害(双極性障害を含む)などのうつ病患者数は95.8万人、神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害などの不安障害の患者も含めると150万人以上となっています。うつ病になる要因は多岐に渡るといわれていますが、AGA(男性型脱毛症)が原因でうつ病を発症することはあるのでしょうか。
AGAとは
AGAはAndrogenetic Alopeciaの略語で、日本語では男性型脱毛症と訳されます。日本ではおよそ1300万人の男性がAGAの症状に悩まされているといわれており、潜在患者も含めるとさらに多くの方がAGAを発症していることが予測できます。AGAの特徴として、前頭部や頭頂部、もしくはその両方から薄毛が進行していきます。AGAが発症する原因はDHT(ジヒドロテストステロン)という悪玉ホルモンです。DHTは男性ホルモンの一種「テストステロン」と5αリダクターゼという酵素の結びつきにより発生します。世界初の経口のAGA治療薬として人気を博しているプロペシア(Propecia)や、2015年に厚生労働省認可の下、AGA治療の新薬として登場したザガーロ(Zagallo)は5αリダクターゼを阻害する働きにより、DHTの生成を防ぎます。因みにプロペシアの日本国内における特許は2015年に切れており、現在では様々な製薬会社からジェネリック医薬品が販売されています。
うつ病とは
うつ病は男性であれば10人に1人が、生涯1度は発症する病気といわれています。男女別では、男性の生涯罹患率は男性で4.2%、女性で8.3%というデータもあります。うつ病になると気分が沈んだり、無気力な状態が続いたり、将来の事に悲観的になってしまいます。うつ病は概ね身体症状と心的症状に二分されます。
・身体症状
身体症状では9割以上の方に寝付けない、眠れないなどの、不眠がみられます。睡眠時間が不足することで食欲も落ち、食生活が乱れ、体重が減少する、あるいは増加することもあります。他の症状としては口渇、動悸や息切れなどの自律神経失調症を伴うこともあります。また、他人と接したり会話することに苦痛を感じることもあります。
・心の症状
朝起きて仕事に行きたくない・・・と感じたことはないでしょうか?これが一時的なものであれば特に問題はないのですが、仕事や職場の人間関係などで激しい苦痛を感じ、業務に支障をきたすようであれば、うつ病の疑いがあります。うつ病の心的症状としては心がもやもやする、落ち込む、人や物事に関心が持てなくなる、仕事などに対してやる気が起きないなど多岐に渡ります。
AGAを発症するとうつ病になる?
結論から述べますと、AGA(男性型脱毛症)が原因でうつ病を発症することはありません。AGAの原因はあくまでDHT(ジヒドロテストステロン)という悪玉ホルモンです。しかしながら、直接的な因果関係はなくとも、AGAが遠因となってうつ病に繋がる可能性は考えられます。うつ病になりやすい方の性格に「まじめ」「几帳面」といった傾向があります。普段から身なりに気を配り、些細な見た目の変化を気にするような方がAGAを発症した場合、鏡に映る髪の薄くなった自分の姿に多大なストレスを感じることでしょう。AGAは加齢や男性ホルモン、生活習慣などが複合的に絡み合って引き起こされますが、ストレスも一つの要因として挙げられます。AGAを発症したからといって必ずしもうつ病が引き起こされるわけではありませんが、うつ病になる一つのきっかけ、トリガーとしてAGAの発症が挙げられるといえるのではないでしょうか。
AGAは早期治療が重要
AGAを発症し、うつ病にならなかったとしても、抜け毛が増えていくのは決して気分が良いものではありません。AGAは進行性の疾患ですので、治療に取り掛かるのが早ければ早いほど薄毛を改善できる可能性が高くなります。逆に治療せずに放置しておくと、抜け毛、薄毛がどんどん進行してしまいます。現在ではプロペシア(有効成分:フィナステリド)を始め、ザガーロ(有効成分:デュタステリド)やミノキシジル(内服・外用薬)などの投薬によるAGA治療が一般的になっています。朝起きたら枕元の抜け毛が増えた、シャワーの後、排水溝に抜け毛が溜まっていた、髪の毛のセットが普段通りできない、などの自覚症状がある場合、一刻も早く専門の医療機関を受診しましょう。
個人輸入に関して
プロペシアやその他AGA治療薬を個人輸入、もしくは個人輸入代行業者を介して購入することは非常にリスクが高く、危険を伴います。これらの薬剤は6割以上が偽造品だったというデータもあり、偽造品を服用してしまうと、AGA治療薬としての効果が全く得られなかったり、中には偽造品に混入した不純物により甚大な健康被害が生じた例も報告されています。AGA治療薬を服用する際は、必ず専門の医療機関を受診し、医師の診察のもと薬の処方を受けるようにしましょう。