ザガーロとは
ザガーロとはイギリスに本社を置く世界的製薬会社、グラクソ・スミスクライン(GSK)社が製造販売するデュタステリドを有効成分としたAGA治療薬です。国内でデュタステリドがAGA治療薬として承認が了承されたのが2015年9月ですが、ザガーロは諸事情から発売が延期され、2016年6月にようやく発売開始されました。
ザガーロには「ザガーロカプセル0.1mg」と「ザガーロカプセル0.5mg」の2用量があり、AGA治療では基本的に「ザガーロカプセル0.5mg」が用いられます。
ザガーロを製造するGSK社はデュタステリドを有効成分とした前立腺肥大症治療薬「アボルブカプセル0.5mg」を2009年から販売しており、ザガーロとこのアボルブはパッケージやカプセルの色が異なるだけで有効成分は同一となります。
実際にザガーロ発売前からアボルブはAGA治療を行う様々な医療機関・クリニックで処方されており、その効果の高さから人気がありました。ザガーロはアボルブを中身そのままでAGA治療適用の治療薬として転用販売された形になります。
しかしザガーロの薬価はアボルブと比較してやや高いことから従来のアボルブ以上の価格設定にせざるを得ず、ザガーロ登場後もAGA治療薬としてアボルブを継続処方している医療機関・クリニック、また継続使用している方が多いのが実情です。
ザガーロの価格改定についてGSK社の今後の対応が期待されます。
有効成分「デュタステリド」とは
ザガーロの有効成分であるデュタステリドは5α還元酵素阻害薬に分類されます。
現在もっとも有名といっても差し支えないAGA治療薬であるプロペシアの有効成分はフィナステリドといいますが、これも5α還元酵素阻害薬となります。
5α還元酵素とは男性の精嚢や前立腺及び精巣上体、また頭部を含む皮膚でのみ合成される酵素です。
5α還元酵素は男性ホルモンの一種であるテストステロンをDHT(ジヒドロテストステロン)に変化する働きを持ちます。DHTはヒトの髪の毛の成長しては抜け、また生えるという一連の流れ「ヘアサイクル」を狂わし、脱毛へと向かわせてしまうAGAの原因物質となります。
5α還元酵素には側頭部や後頭部の皮脂腺に存在する「I型5α還元酵素」と前頭部から頭頂部の毛乳頭に存在する「II型5α還元酵素」の2種類があります。
従来のAGA治療で用いられてきたプロペシア(フィナステリド)はこのうちのII型5α還元酵素の働きのみブロックする作用があり、側頭部や後頭部の薄毛にお悩みの方はあまり効果を実感することが出来ませんでした。
しかしデュタステリドはI型・II型双方の5α還元酵素を阻害する作用があることから、プロペシアよりより広い範囲の薄毛の改善効果が期待できます。
また海外で行われた研究では、プロペシア1mg錠を服用していた被験者群と比較してデュタステリドを0.5mg服用していた被験者群の方により高いAGA改善効果が見られ、約1.6倍の発毛効果があることがわかりました。
このようにザガーロはヘアサイクルを正常化させ、脱毛を防ぐことが得意な薬剤となります。
さらなるAGAの改善には、発毛を促す「ミノキシジル製剤」や髪の毛に必要な栄養素である「亜鉛」、「リジン」,「ビタミン」等の併用が効果的です。
ザガーロの服用方法
ザガーロは1日1カプセルを経口服用します。食前食後、どちらの服用でも特に効果や副作用に関係ありません。
1日24時間の内、服用の時間を決めることで「習慣化し飲み忘れを防ぐ」、「有効成分の血中濃度を一定に保てる」といったことが期待できます。
またカプセルの内容物が口腔咽頭粘膜を刺激する可能性があるのでカプセルは噛んだり開けたりはせずに服用してください。
服用開始後12週間でAGAの改善が認められる場合もありますが、治療効果の判定・評価のためには通常6ヵ月間の治療が必要です。
ザガーロの副作用
添付文書によるとザガーロにはいくつかの副作用の報告があります。
副作用第II/III相国際共同試験においてザガーロが投与された総症例557例(内120例が日本人)中、95例(17.1%)に臨床検査値異常を含む副作用の報告がありました。
その主なものは勃起不全24例(4.3%)、性欲減退22例(3.9%)、精液量減少7例(1.3%)でした。
また日本人120例中の臨床検査値異常を含む副作用が報告された症例は14例(11.7%)ありました。
その主なものは性欲減退7例(5.8%)、勃起不全6例(5.0%)、射精障害2例(1.7%)でした。(承認時)
また国内での長期投与試験において、ザガーロが投与された総症例120例中20例(16.7%)に臨床検査値異常を含む副作用が報告されました。
その主なものは勃起不全13例(10.8%)、性欲減退10例(8.3%)、射精障害5例(4.2%)でした。(承認時)
このようにザガーロは臨床検査の際に頻度は低いですがいくつかの副作用が現れる可能性があることが分かりました。
ザガーロの処方は専門の医療機関で医師の診断を受け、説明を受けてからをお勧めします。
ザガーロの注意点
ザガーロは服用に関していくつかの注意点があります。
①AGA(男性型脱毛症)のみの適応です。
その他脱毛症(例:円形脱毛症)に対する適応はありません。
②小児、及び20歳未満の方は服用できません。
小児、及び20歳未満の方を対象とした臨床試験は行っておらず、安全性や有効性は確立されていません。
③妊婦、産婦、授乳婦等は服用できません。
ラット、及びウサギに有効成分であるデュタステリドを経口投与させた結果、雄胎児の外生殖器に雌性化が確認できました。
このことからザガーロの作用により血中DHT濃度が低下し、男子胎児の外生殖器の発達を阻害する可能性が示唆されました。
またデュタステリドが乳汁中に移行するかは不明とされます。
④前立腺癌等の検査の際、ザガーロ服用中の旨を検査を行う医師に知らせてください。
有効成分デュタステリドは前立腺癌のスクリーニングにおける重要な指標であるPSA(血清前立腺特異抗原)値に影響を与えます。一般的にPSA値が基準値(通常は4.0ng/mL)以上の場合はさらなる評価が必要となります。
ザガーロの服用でPSA値が基準値より低下している場合、検査で前立腺癌等の疾患を見落としてしまう可能性があります。
ザガーロとその他のデュタステリド製剤
ザガーロとアボルブは同一のデュタステリドを有効成分としています。
その他のデュタステリド製剤としてはアボルブジェネリックであるアボダートやデュプロスト等が良く知られています。
ザガーロ、アボルブ、またこれらアボルブジェネリックは同一成分を同用量含んだもので、継続服用でのAGA改善効果は医学的には全く同一のものとなります。
アボルブジェネリックはザガーロやアボルブと比較してその価格の低さから人気があります。
しかし現在国内で承認されているデュタステリド製剤はザガーロ・アボルブの2つのみとなり、これらアボルブジェネリックは海外からの通販・個人輸入が購入手段となります。
医薬品の通販・個人輸入は流通の間の偽造薬の混入や料金振り込み後の音信不通といったトラブルの報告が多く、厚生労働省も控えるよう呼び掛けております。
以上のことからもアボルブジェネリックを購入する場合は厚生労働省の許可の元、メーカー直通といった安心できる正規ルートを持つ医療機関等をお勧めします。